医師。中村哲。ノーベル賞というならこの人にこそふさわしい。なんて惜しい人を亡くしたんだ。
2019年。大晦日。
年末恒例のくだらないお笑い番組や幼稚な格闘番組なんかより、1局でもいいから、せめて亡くしてしまったこの年の大晦日だけでも、この人の偉業をしっかりと振り返る番組を組むべきだろうに。なんて情けないテレビ。
代わりに、中村さんの偉業を振り返りながら年を越す。
良い年を迎えるにふさわしい。
『戦争をするよりも、安心して食べていけることが結果として平和をもたらしている』という言葉がものすごく重い。武器では平和にはならないと言っている。
『100万発の銃弾より、1本の用水路の方がはるかに治安回復に役立つ』
この言葉は2009年のものだが
2019年末の現在において、「中東地域の平和のため」とか「積極的平和」などという名目で自衛隊中東派遣を決める政府の言葉がいかに嘘なのかを理解させてくれる。
『ISが勢力を拡大している地域は、干ばつの酷い地域と重なり合っている』『食べられない、そのために傭兵になる』
裏を返せば食べられるようにすればISは勢力を弱めるということであって、
軍隊を派遣しても何も解決しないということだろう。
「平和のため」という謳い文句で戦争を始めてみたり、「積極的平和」などという嘘で自衛隊を世界に派兵させることは結果として平和はもたらさない。地道な人道支援のみが治安を回復する。それを実行して見せたのが中村さんだ。とてつもない。
この人にここまでさせたのは、もちろん中村氏自身の人格や才能のなせるわざではあるが、何よりも「平和のため」などという名目で非人道的な殺戮をするその行為に、心底の怒りがあったからではないか。
彼らから生活も文化も奪った戦争
そんな戦争を始めたのは「大国」だったり「アメリカ」だったり「私物化する総理大臣」なのは確かにそうなのだが、それだけで止まってはいけないと思う。
「誰か悪の親玉がやった、そいつが悪かったね、はい終わり」じゃない。その戦争を始めさせた国民の意識が何よりも怖い。
何が怖くてここまでやるのか。自分たちの何が崩されるのが怖くて、こんな愚かしい戦争を許したのか。「平和のため」と言いながら結果として平和をもたらさない戦争をいつまで支持するのか。支持した国民自身が問われることはないのか。
自分も国民だが、せめて愚かな派兵には明確にノーを言い続けていたい。
中村さんの死は本当に悲しい。
しかし、その力はかえって強まったと思う。
追悼 よりも、むしろ学ばせてもらう。