min117の日記

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天空の城ラピュタを(大人になってから)見て思うこと

2024/9/3(火)

ホーキング博士によれば、時間と空間は、実は同じものだそうだ。そして、時間と空間の両方を通り抜けられるものは、重力しかない。

 

飛行石は唯一、重力に逆らえるものだ。それは、空間の歪曲にも、時間の前後にも、影響されない。時空を越える石だ。

 

球面を平面で切ってみよう。スイカをシタジキ(下敷き)で切ったと思えばいい。シタジキに描かれるのは円だ。2次元の世界では、3次元の球も円に見えてしまう。現実も同じことでは?われわれ3次元の世界では、4次元の物体が球に見えてしまっているのかもしれない、19世紀の書「フラットランド」にはそう描かれている。その次元を、時空を、超えられるのが飛行石だ。

 

それが、地面の石たちに含まれている。地球の石たちに少しずつ含まれている。「土から離れては生きられない」とシータは言う。そんな、生物としての人間のすぐ足元に、宇宙の法則(重力)を超える石があるというのだ。なんというロマン。

 

園庭の壁。外から見れば石の壁なのに、内側からは空が見える。今の技術ですらこんなすさまじいものは作り出せない。「いや、内側から見える空は、液晶画面に映し出された映像だろう?」。そんなチャチなものじゃない。光を操る技術がここにはある。

 

光。重力と同じ、永久なるもの。人の力では操れないもの。アインシュタインは「光の速さだけは(どの運動系からみても)必ず一定だ」という発想から相対性理論を導いた。

この作品が描かれたのは1986年。プラザ合意の翌年。まだWindows95すら世の中にない。その時代に、この壁を発想する宮崎駿のすごさ。これが天才。

 

「何度でも甦るさ!それが人類の夢だからだ!」ムスカの言葉。これは本当だろう。みんなの想い、こうあってほしい、が作る力というのは確かにある。人の思いが集まって作り出すもの、目に見えない力。それはルソーが、社会契約論の中で捕まえた力。一般意志。そう考えれば、ムスカの言葉も、恐ろしい真実を突いている。

 

「あなたはここから出ることもできずに、私と死ぬの」。若干14歳のシータの覚悟の凄さ。地に根を張って生き、草刈りの季節に日の出の位置を知る少女は、子供ではなく、独りで生きる力を持つ人間だった。その口が発する死の言葉は重い。

 

「王だけ生きてるなんて滑稽だわ」

滑稽ときたか。すごい言葉だ。人は王になりたがる。ロシアのツァーリルイ14世、クメールルージュ、おごった自民党。誰一人として、権力を持った者が、自らそれを自制することなど、現実にはありえない。できない。それを、王みずからが滑稽という。そんな王は、統治は、実際に可能なのか。

 

バルス!」

全ては崩れた。壊れていくロボット、糸が切れたようにバラバラになって海に落ちていく。しかし「ワイヤーを張れば大丈夫だ」と言ってパズーとシータが乗った最後の凧から見えた園庭には、壊れていないロボットがいた。バルスしても、園庭のロボットは壊れないのだ。

王だけ生きているなんて滑稽、そんな状況になったら、王だけが奢った国家になってしまったら、「よいマジナイに力を与えるには悪いマジナイも知らなければいけない」、その言葉を使って、ラピュタを滅ぼさなければならない。そんな魔の言葉を使っても、壊れるのは戦闘ロボットだけで、園庭のロボットは壊れないのだ。戦争と平和。永久に壊れないもの。示唆が深い。

 

「おばさま痛い」と言われ「髪の毛を切られるほうがよっぽど辛いよ」と優しいドーラ。しかし、いっときの再開のあと、シータとパズーは手を振って海賊たちと別れた。弱冠14歳。それでも自分達の生き方をもった人間は、独立した人間は、ちゃんと別れを告げる。自分の生活があるからだ。地に根を張った生活が。

 

ラピュタはどこにいくのだろう。重力に逆らう、唯一時空の歪みを超えられる不思議な力をもった飛行石は、宇宙を背景にして、しかし根は張ったままだ。

 

 

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