こないだ合格した試験。
の受験料が、次回からいきなり値上げになった。
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:受験手数料の改定について
その額なんと7,500円。改定前が5,700円だったから突然31%もの値上げになる。
100歩ゆずってAPからAUまでが値上げになるならまだ分かる。イチ民間団体でしかない主催者(IPA)の財政事情で決められる範囲だから。
これが、国家資格であるSCが値上げになるなら法的な手続きと根拠が必要だ。
SC(情報処理安全確保支援士)は、弁護士や司法書士のような士業であって、イチ民間団体に過ぎないIPAが認定する資格(APからAUまで)とは質が違う。
国家資格だから受験料も非課税になっている。
裏を返せば、消費税として徴収されるはずだった部分に、別の財源(税金)が充てられている。つまり税金(が投入された受験料)で維持されている士業なわけで、それを値上げする=国民の税負担が増えるのだから、必ず法律の根拠が必要だ。
そこで、試験を主催するIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が、今回の値上げについてどのような案内をしているか見てみる。
改定案内
ちゃんと法律(の委任を受けた政令)の改正がされている。実はパブリックコメント(パブコメ)も出ていたので、値上げすることは事前に知っていた。これについてはあとで詳しくみる。
では、そもそもなぜ値上げするのか?だ。IPAのプレス発表を見てみよう。
プレス発表
値上げの理由はこれ。
①近年の試験問題の印刷・運搬費用、会場賃借料などの値上がり
②コロナによる実費の増加 だそうだ。
いやちょっと待てよ。いろいろおかしくないか?
まず①について。
「近年の…値上がり」と言っているが…
受験料を5,700円と決めた平成28年度の時点から、今回値上げする時点(令和3年7月)までの間に、試験問題の印刷・運搬費用、会場賃借料がそんなに値上がりしているのか?これは甚だ疑問だ。その間、印刷や運搬にかかる原油価格や賃借料の算定基礎になる土地価格が暴騰した記録はない。場当たり的な言い訳ではないのか?
万が一そういった暴騰があったとしても、5,700円と決めた平成28年からのわずか3年目に31%もの値上げに至ったというのは、当初費用を甘く見積もっていたIPAのミスではないのか。今回の値上げはそれを受験者に転嫁しているだけに見える。
さらに②について。
「コロナ対策としての座席間隔の確保で実費が増加」と言っているが、それが値上げの理由になるかは極めて怪しい。
少なくとも自分が受けた試験会場は、座席間隔は例年とほぼ変わらず、わずかに広がったとしても別部屋を手配する(ほどコストがかかる)変更はなされていなかった。追加の会場手配が必要になったのは、都心等、緊急事態宣言が発令されたごくわずかな都市だけではないのか?それを、値上げという形で全国の受験者に負担させているのでは?会場の変更(追加や拡張)が本当にあったかどうかは受験者に聞けば分かることだから、情報交換される全国の受験者コミュニティでも聞いてみることにしよう。
「検温・消毒等の実施」とも言っているが、これも値上げの理由としては甚だ怪しい。だって試験会場では、受付に形だけの検温があるだけ。当日の体温を記載した紙一枚(自己申告)を出すだけで通過でき、実質的なチェックは何もされていない。
この試験に限らず、日本全国で行われている「会場の感染対策」「安心・安全」は形だけのものばかりで、実質的な感染拡大防止になっていない(だからこんなに拡大している)。
こんな、形だけの感染対策に、31%もの値上げになるコストがかかったと思えない。
いや、コストがかかるのは、検温や消毒の機材や方法そのものよりも、それを実施する人間の人件費だという見方もあるかもしれない。しかし、これも現場を見た実感とは乖離している。
だって、試験会場にいる試験官は情報処理の基本すら知らない素人バイトだからだ。
いやしくも国家資格である支援士の試験会場をマネジメントする試験官が、安い日当で雇われた日雇いバイトであるという事実。
もしこれが司法試験の短答試験会場だったら。司法書士試験の午前問題会場だったらどうか。ありえないだろう。一生がかかる士業の本試験の会場で、実務の基礎すら知らない人間が試験監督するのだったらたまらない。重要な試験であればあるほど、それなりのコストをかけて試験官(人材)を配置するはずだ。
情報処理試験が(国家資格試験を含むのに)そうせず、日雇いバイトで済ませているということは、実は試験そのものがそれくらい軽いものと見られていることの裏返しだし、実施する主体(IPA)ですらもそう見ているということの証左だろう。しかもそんな日当が安いわりには、会場の感染対策やクレーム処理等の負担は彼ら(日雇い)に押し付けているわけだ。鬼か。
そうして安く人件費を抑えている一方で、コロナ対策を名目に受験料を値上げした。本当に必要な値上げなのか?極めて怪しい。
IPAの財務諸表を見てみると令和元年度だけで当期純利益は10億円に上っている。
値上げ必要あるかこれ?
さらに役員報酬はというと、
平成30年度で7,236万円(職員給与全体の3分の1にも上る)で
令和元年度には7,659万円(さらに上がっている)。
コロナになっても役員報酬はほとんど変わっていない(どころか増えている)。
まとめると
・会場は(コロナ前と)ほとんど変わらず、座席間隔が値上げの理由になるとは思えない。
・検温等の感染対策は形だけのもので、コストがかかっているとは思えない。
・会場の試験官は日雇いで、人件費が抑えられている。
・コロナによる負担は現場(安い日雇い)に押し付けておいて、そのコロナを理由に値上げするとは。ゲスい。
・コロナの前後でIPAの財務状況は悪化していない。むしろ儲けている。
・コロナの前後で役員の報酬は変わっていない。彼らの報酬はコロナ影響を受けていない(受験者の費用負担だけが増大した)。
つまり、IPAの示した受験料値上げ(31%増)の理由は、受験現場にいた所感や財務諸表等のデータ等を合わせてみる限り実態が極めて怪しいもので、受験者の一方的な負担増加になっているとしか思えない。
同じ思いを持った人は他にもいるようだ。
少なくとも、
・受験料が突然31%もの値上げになったこと。
・その値上げの根拠が怪しいこと。
・財務情報等から読み取れる、値上げ理由との齟齬。
については、他の受験者と共有してみたい。
コロナでオンラインが発達し、いろんな情報を共有しあう手段ができた。コロナ禍に値上げとダブルパンチだが、せめてのプラスに活用させてもらう。
※追記
IPAのいう「座席間隔を広げたことによる(会場の追加等による)費用の発生」についても財務諸表で見てみると、
平成28年度(賃借料3億円)
令和元年度(同5億円)
となっており、たしかに2億円ほど増加していることがわかる。
しかし、当期純利益は
令和元年度(同10億円)
となっており、損失を補って有り余るほど上がっている。
想像だが、本来はIPA(というマトモな組織)が行なっていた情報セキュリティスペシャリストという試験に目をつけた政府が、ムリヤリ国家資格(情報処理安全確保支援士←ダッセえ名前)をつけて国家資格化したからこんないびつな士業になったのではないか。
そして、そうやって国の介入があったから、当期純利益が異様に激増(3億円から一気に10億円 ← イチ独立行政法人では考え難い)したし、それにもかかわらず受験料を値上げした(しかもコロナというゲスい理由をつけてまで)ということは、それによる収入の多くを、天下りや関連議員に流すための、つまりカネ集め機関に位置付けられて、政府のいいように使われているのではないか。従来はマトモな機関であったIPAが、政府のカネ集めに使われるだけの(せっかくの良さを失った)下部機関になり下がってるんじゃないかと疑わざるを得ない。
安倍晋三が宇宙軍とサイバーとか(幼稚でネトウヨ的な)言葉を政治に持ち込んで、それを具現化し始めたのが平成28年頃だったことと合わせると、その路線を受け継いだ菅義偉の政権下において、IPAは政治に吸収されて、下部機関として、その試験を(政治の都合のいいように)使われはじめているのではないか。今回のこの値上げは、その一端であろうと思わざるを得ない。